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朱く染まった夕焼け空を、幾筋もの黒煙が走っている。
ボロボロに崩れ落ちた観覧車。頭のないマスコット達。レールの途切れたジェットコースター……
辺りはどこもかしこも火の手が上がっており、元の明るく、騒がしくも和やかな雰囲気の遊園地など、最早どこにも残ってはいない様子だった。
――それは夕焼けか、火災によるものか。
普段なら……三十分も経てば、太陽は完全に沈み、辺りは闇に包まれる。
しかし、あちこちから上がる火の手により、日没三十分前だとは思えない明るさの遊園地『だった』場所。
そんな状況の中――
「ハァ、ハァ」
――一人の幼い少年が走っていた。
見た目からいって、五、六歳くらいだろうか。
恐らく爆風にでもやられたのだろう。ボサボサになった黒髪。所々傷のついた服。手足に擦り傷が数ヶ所。
おぼつかない足取りながらも、少年は懸命に、息を切らしながらも、走り続けている。
「ハァ、ハァ……母さん……ハァ、どこ……に、いるの……」
突然、少年の背後から何かが爆発した轟音が鳴り響く。
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