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「あるよ」 楼二は極普通に答えました。それはそうでしょう。楼二にできるのは幽閉された空間で知識を蓄えることだけで、唯一社会との接点は一度に一人との逢瀬。人と人は、お互いにお互いしかいなければ、話すか触れあうしかやることがない。私の来ない夜に階段を降りてやってくるのは女性かもしれませんがもしかしたら男性かもしれません。楼二が他人と絡み合う図を想像しただけで、あの手で誰かの肌を撫でるのを想像しただけで体中の血が逆流しそうでした。 「…私とは」 さすがにそれ以上は口にはできず、私は冷めきった茶を飲み干しました。
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