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華族の家であることは分かりました。母屋が洋館、離れが日本家屋と様式がごっちゃになっていて、私はすれ違った途端顔も思い出せないような男に案内されて夜の庭を突っ切ったのですが、窓から漏れる灯りの数が尋常ではありませんでした。これが個人の邸宅でしょうか。
男は私を離れに案内し、「ここから先はおひとりで」と早口で呟きました。
「ここをあがって廊下を真っ直ぐ突き当たると階段が御座います。半地下ですので足下に気をつけて。外から部屋の者に声をかけてください」
「…あの、ひとりで入っていいんでしょうか」
男はぱっと頭を下げると庭石に躓きながら去ってしまいました。今思えばかなり不気味ですが、私は珍しいものばかり見て興奮しきっており、好奇心の塊でもあったので、さっさと草履を脱いで奥に進み、薄暗い階段を降り、言われた通り目の前に表れた襖にマスターの名前と自分の名前を告げました。
しばらく待つうち、いきなり中から襖が開きました。
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