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信じ難い話です。楼二の言動は極普通でした。世間一般の常識、時事、政治外交、俗世間の流行についても私より詳しいぐらいでした。ですが楼二の髪や目の色、おそらく由緒ある一族の血統であろうことを考え合わせると無い話でもありません。それほどに楼二の容姿は人間離れしていたのです。 綺麗だと思いました。とても。 「楼二という名前は?」 「自分でつけた。自分の名前ぐらい自分でつける」 楼二が望めばどんな情報でもどんな品物でも調達されます。人もです。 最初に呼ばれたのは最高学府の教師だったそうですが、楼二は性別も年齢も職業もバラバラで、律儀で口の堅い人物を選んで口伝で召還しているのです。マスターもそのひとりでした。私は楼二が選んだ人物に何代にも渡って選ばれたのです。 「3日後。気が向いたらまたおいで」 楼二に送り出されて表へ出ると、先刻の男が待っていて、私の半年分の部屋代に相当する金を黙って押しつけました。
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