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「全ちゃんはキス、初めて?」
「なっ…!!ぅ…うっせー馬鹿っ…、いいから退けって―…」
それじゃ『ハイ』って言っているようなもんだろ、と髭を蓄えた顎に指をかける。
全蔵に鏡を突きつけてやったらどんな反応をするだろうか。
リンゴの様に真っ赤に染まる顔に、男にしてはふっくらした唇。
ふるふると小さく震えるそれを慰めてやりたくて、銀時はそのまま静かに唇を落とした。
「………っ!!?」
絶句。まさにそれだ。
本気で驚いた時は声など出ないもので、唇へ伝わる温かな感触に呼吸すら止まる。
真昼間なのにやたらと静かな部屋に心臓の音が煩い。
相手は男で、ただの友人で、腐れ縁で…。
なのに何でこんな…っ…
「ぁ…、坂……、んっ…」
ゆっくりと唇が離れたかと思えば、相手の名前を呼び終わる暇すら与えず、今度は唇を啄ばむ様に何度も唇を重ねられる。
何度も何度も…。
うまく呼吸のタイミングがつかめず息が上がり、甘い口付けに脳が揺れる。
「は…っ、ぁ・・・ヤメ…っ!!」
これ以上は危険だと察知し、渾身の力を込めて銀時を押し返す。
が、思った以上に力は入らず、少し離れさせるのが精一杯だ。うろたえる全蔵を見下ろして、本当に愛しいものを見るかのような欲情した視線を向けてくる銀時の紅玉の瞳。
銀時は、本気で逃げなければと少し怯んだ全蔵の一瞬の隙を見逃さなかった。
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