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「いい加減に…っ!! って…ぉ…、おい。坂田…?」
突然ズシリと圧し掛かってきた身体。
嫌だと身を捩る肩口に顔を埋めて突っ伏してきた銀時を押し返してみるもピクリとも動かない。
まさかとは思ったが、高熱が出たまま暴れ過ぎたせいで、身体は限界だった様で、銀時は全蔵に乗っかったまま意識を手放してしまっていた。
「信じらんねェ…。つーか、ちょ!!離せこの……っ!!」
やっと大人しくなった野獣に、ホッと胸を撫で下ろし、身を捩って抜け出そうと思ったのに。
意識を無くした人間の身体は意外と重く、繋がった手は何とか引き剥がしたものの、そのすぐ直後に抱き枕を抱き締めるように絡みついてきた銀時の腕に、全蔵は全力でもがいた。
しかし、どうもがいてもその腕の枷から逃れられない。
必死にもがけばもがくほどきつく抱きしめ返してくる腕とずっしり圧し掛かる体重に、人間抱き枕は完全に捕らわれ、逃れられなくなってしまった。
『マジ、なんだよ…。』
意識を飛ばす寸前に放った銀時の一言は、とても弱々しく、甘く、優しく。
とてもではないが、からかっているとは思えなかった。
もはや逃れられそうにない身体の力を抜き、諦めモードでぼんやりと天井を眺める。これでほんとにからかっていたとなれば、寒空の下で真っ裸にした揚句、1日中クナイで貼り付けの刑に処してやろうと思う。
視界の隅で呼吸に合わせて微かに上下する熱を孕んだ銀色の髪に指を通してみると、ふわふわとしたわたあめの様な髪が指先を擽った。
「…全ちゃん…好き。」
一見寝言のように聞こえる台詞。
全蔵は、上に覆いかぶさり綺麗なホールドをかましてくるタヌキな相手に、回復したら絶対一発決めてやろうと硬く決意した。
「マジで死ね。」
逸らした視線の先には、飲み干した後のピンク色した紙パックが転がっていて、
初めてのキスは、
いちご牛乳の味がした。
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