54人が本棚に入れています
本棚に追加
そして今日。
いまだに戻ったという連絡はない。
「アイツどこほっつき歩いてんだよ。連絡ぐれェよこせってんだ…。」
子供たちにまで心配掛けさせんじゃねェよとぼやき、そろそろ冷たい外気をシャットアウトしようと踵を返した。
が、後ろ手に障子を閉めかけた瞬間、フワリと香った甘い香りに思わずハッと振り返る。
「坂田…っ!?」
確かに奴の気配を感じたはずなのに…。
その視線の先にいると思った人物像はなく、廊下に出て辺りを見回してみても、自分以外の人の気配は存在しなかった。
「まさかな。いるわけねェか…。」
足跡さえなく、先程と何一つ変わらない雪景色に安心したような寂しいような、良く分からない複雑な気持ちで溜息をつく。
そもそも、この家は忍者屋敷。
正規のルートを踏まなければここへたどり着くことはおろか、直ぐにトラップに捕まり地下室送り。
入って来られる訳がな―…
…―カサッ
「誰だ…っ!!!」
草木を揺らした僅かな気配に、咄嗟にクナイを構え目を凝らす。
こんなところまで入って来られるなんて。
一体どれほどの手練だと緊張を走らせていると、草陰から出てきたのは、雪をかぶったそれはそれは小さな―…
『…に……にゃおん…。』
………猫?
゚*,†ねこまんま†,*゚
‐全蔵side‐
最初のコメントを投稿しよう!