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視界がぼやける。
ヒンヤリとしたタオルが心地いい。
ゆっくりと浮上する意識の中で半分眠ったままぼんやりと天井を見つめる。
きもち頭も痛い気がする。
叩かれた後の様な―…
「飯、食うか?」
ん…。と呻き声を上げ、声のする方へ眼をやる。
これは夢だろうか、目の前には愛しの腐れ縁、全ちゃんこと服部家の若旦那が俺を見下ろしている。
何度もアプローチはかけてきたつもりだが、相当鈍感なのか、全蔵は一向に自分の気持ちに気付いてくれない。
というか、そもそも男に恋愛感情を持たれるなど考えもしないだけで、気付かないだけなのであろうが。
実際自分だって、男相手に友情以上の感情を持ち始めたことに気付いた時には、頭がどうかしてしまったのではないかと脳ドックを受けに病院へ行こうか本気で悩んだ程だ。
実際、金がなくて断念したのだが…。
それでも好きなものはしょうがない。
きっとストイックな性格の相手のことだ、普通に告白したって、馬鹿にしてんのかと足蹴にされて相手にもして貰えないだろう。
むしろもう二度と口をきいてもらえない可能性もある。
こんな状況下だったらちゃんと俺の気持ちを受け止めてくれやしないだろうか。
そんな甘い期待を胸に口を開いてみた。
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