いちご牛乳はキスの味

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「なァ、これって若旦那が作ってくれたの?」 「食いたくねェなら食うな。」 「んなこと言ってねェだろ!!」 「じゃあ何。」 まだ文句でもあるのかと言いたげな顔で ――と言っても顔の半分以上は髪の毛で隠されて表情もくそもあったもんじゃないが、長年の付き合いで段々と口元の僅かな表情だけで気持ちを読み取れるほどになってしまった―― 銀時の顔を見やる全蔵に料理出来たんだと感心しつつ二口目を頬張る。 「ボンボンでも料理出来るんだな。」 「ボンボンを一体何だと思ってんだお前は。つーか、ボンボンて言うな。」 服部家という由緒正しいお屋敷なだけあって、給仕さんやお手伝いさんは沢山いるそうで、ただ自分で出来ることは自分でやりたいとの全蔵本人のたっての希望で、忙しい時以外は自炊は自分で行っているとのことだった。 俺なら迷わずお言葉に甘えて至れり尽くせりの生活を堪能するのに、と銀時は思う。 「美味い。」 「あそ。」 本心を正直に伝えたのに、褒めてもなんも出ねェとそっけなく返事を返し、おかわりの粥をオタマで掬って注ぐ全蔵。少しぐらいデレろよ、と極端にデレ要素の少ない目の前のツンデレ君に銀時は口を尖らせる。 その後も銀時は、黙々と薄味のお粥を口に運んで、結局ぺろりと全部を平らげたのだった。
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