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「―そろそろ、ベルカ王国か…今回はなるべく長く滞在したいな」
木漏れ日が差す程度に生え茂った木々に囲まれた道、一人気楽に歩く青年は呟く。
国と国の境目、国境間近の道すがら、青年は次に訪れる予定の国に思いを馳せる。
「エルトンじゃあ仕事が余りにもなかったからなぁ…ま、平和なのは良いことだが」
前に訪れた国は平和で穏やかな場所だった。
これと言った仕事がなかった。
傭兵を生業にしている青年にとっては、死活問題であった。
訪れる国々には、青年はだいたい1~2ヶ月ぐらいは滞在するのだが、前回の国には2週間ほどしか滞在せず移動することにしたのだった。
そして、新たな国への国境が見えてきた時だった。
複数の柄の悪い男達が、女の子を担いで横切っていった。
その様子は誰がどう見ても、ただ事ではないとわかる。
青年は当然、その様子に気づき短くため息をつき頭を掻いた。
そして、背中に携えた身の丈ほどの大剣に左手をかけ、男達の方を見やった。
「おーい、俺の目の前で女の子拉致ってんじゃねえぞ?」
青年の一言に、誘拐犯達は足を止めて青年に向き直った。
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