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「待たれよ、青年」
「ん?なんだ、まだ用があるのか?」
「ああ。姫が助けてくれた礼がしたいと申してお出でだ。是非、そなたを城に招きたいと」
先ほどまで張り詰めた空気を纏っていた隊長は、今は穏やかな雰囲気をしながら話した。
その隊長の後ろで、恥ずかしげに隊長の背中に隠れる少女の姿もあった。
その様子と話を聞き、青年は軽く肩を竦める。
「悪いけど、礼とか、見返りの為に動いた訳じゃないんでね。嬉しいけど遠慮しとくよ」
「しかし…我々も礼がしたいのだが」
軽い態度で二人の申し出を断る青年。それに、尚も食い下がる隊長に青年は短くため息をついた。
「じゃあ、入国許可証をくれないか?前の国で作るの忘れてな」
「入国許可証…か…わかった。では、これを受け取られよ」
話を聞いた隊長は、自分の荷物から2つの札のような物を手渡した。
「…これは?」
「王族並びに、それらに付き従う騎士に渡される証だ。それがあれば我が国の中で優遇される」
入国許可証と共に渡した物は、優待券みたいな物らしい。
しかし、青年は入国許可証だけを受け取り優待券を突き返した。
「…何故受け取らない?」
「俺が欲しいのは、入国許可証だけ。そんなの貰っても嬉しくないんでね」
あっけらかんと言う青年の態度は、それだけで隊長を諦めさせることが出来た。
「ま、これも何かの縁さ。この縁があればまた会えるさ」
「…そうだな。では、また会う時には城に招待させてもらおう」
互いに笑顔を交わし合った二人だった。
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