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「かか!」
叫んで駆け寄る現を母は目で咎めた。
「逃げて……現、逃げて」
「なに言っとる。待っとれ、今助ける」
「現……おまえだけは逃げて」
しかしその瞬間、現は何者かに後ろから首を掴まれ、刹那にして木の残骸に叩きつけられていた。
母がやめてと叫び声を上げた。仰天していると、目の前に武装した大男たちが現れて、現の髪を引っ張って顔を覗いてきた。
「生きている。親子か」
「子供だ。この子供じゃないのか」
男たちは見たこともない異国の甲冑をしていて、何かを話し合っている。
「誰か、グアルディエール様を呼んでこい。可能性がある」
ひとりがそう言ったときである。十人ほどの大男たちを掻き分けて、一回り小柄な別の男が現れた。
「いたの?」
金糸の髪、青い目。
グアルディエールというらしき異人は一言訊いた。
そして現を見ると、まばたきをして近づいてきた。
「君、名前は?」
グアルディエールは屈んで尋ねた。現はしゃがみこんだまま何も言えなかった。
「現、という名前じゃないかな?」
「……」
現は僅かに頷いた。
すると大男たちが一斉にざわついたあと、諸々に武器を抜き始めた。
「この子供が例の……」
「グアルディエール様、殺しましょう。その子供こそが探し求めた、天界に脅威を及ぼす、運命の子供です」
「まぁ待ってよ」
グアルディエールは従者を制した。
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