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霜で真っ白になった車の中は寝不足のマリの目を覚まさせた
『寒ぃ~』
エンジンをかけてヒーターを最強にしてゆっくりと走りだす
CDのプレイボタンを押すとマリの好きなイギリスのバンドの曲が流れ始めた
走り出して10分
車内も段々と温かくなっていた
『コウちゃん…』
寒さのあまり助手席でフードを被って小さくなっていたマリが口を開いた
『ん?』
『……なんでそんなに優しいの?』
『なんでって…、前にも言ったろ。マリが好きだから、マリの笑顔が見たいからさ』
『……そんなに私のどこがいいの?』
『どこって…全部。そんな事より眠いんだろ?着いたら起こすから寝ていいよ』
『…うん』
ほどなくマリが寝息をたて始めると高速のインターが見え、流れに乗って加速した
助手席で眠るマリ
繋がらない電話、すれ違い、熊のヌイグルミ、夕べの電話、相手。
幾つもの事が頭の中でぐるぐると回っている
心の曇りはウインドウの溶けた霜をワイパーで払うようにはいかなかった。
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