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記憶障害。それは今までの記憶、もしくはこれからの記憶に障害が出ることを指す。段ボールに入っていた彼は、どうやら前者らしいのだが、普通の記憶障害とはまた違うようだ。
彼は、「名前」は覚えているが、「形」が覚えていないらしい。
「まぁつまり、あなたの名前は知ってるけど、顔は知らない。Web上の知人みたいなもんだね」
俺の部屋に移動したあと、おしるこを飲む彼に詳細を頼むと、人事のような返事が返ってきた。
このおしるこ配達員。俺がこの男を知ってる前提で話進めてやがる。
だから、俺はそいつ知らないって。
「でもお前、さっき見せた名前と漢字、知ってるってはっきり言ったもんな」
「うん!」
まるで子供だ。年上なのに。
まず、なんで俺なんだよ。他にも沢山友達知ってるんじゃないの?両親とかは?
両親の単語を出した途端、男の身体が反応した。
そして、涙目になっていく。
やばい事を聞いたようだったからすぐさま謝ると、おしるこのおかわりを店長に貰っていたバイクさんが、
「両親、亡くなったって。そのことは伝えてあるからさ」
身内もいない。そんな言葉に俺が罪悪感を感じたのは、バイクさんの厳しい目線がおしるこではなく俺に向いていたから。
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