唐突に、

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男を座らせてお茶を準備する間、リビングではだいぶ盛り上がっていた。 と言っても、盛り上がってるのは飼育員の幼なじみだけだが。 「サイン貰って良いですか!?」 「うん。いーよー」 「あの、一緒に写真」 「撮りましょうか。ね」 「やったー!」 ぱしゃ。 バイクさんはというと、飼育員のがっつきに頷きで返している。 多分あの人の性格上あの対応が精一杯なんだろう。 撫で肩栗鼠はというと… 「ね、優しいでしょ。ね」 俺の後ろについて、ちょこちょこ話し掛けてくる。 あの人の近くにいればいいのに、久しぶりなんでしょ? 「うん…まぁ…」 曖昧な返事。 なんじゃそりゃ。たいして楽しみじゃなかったのか? 出来たお茶を出すと、先程まで飼育員にきゃーきゃー言われた男は俺に苦笑で会釈した。 「凄いお友達だね。君が冷めて見えるくらいだよ」 まぁ、俺自身あまり歌を聞かないんで、冷めているように見えるのもある気がするが。 「あ、新しいシングル出たんだ。是非もらってよ。」 貰ったシングルのタイトルは、事前に飼育員馬鹿から聞いていたものだった。 確かPVに釣り道具が出てくるとか出てこないとか。 ジャケット写真には、漁師の格好をした男が仁王立ちしている。 どんだけ釣り好きなんだ。こいつは。 .
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