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男がいなくなり、バイクさんも仕事に行き、撫で肩さんもエプロンをつけ店に向かった。
幼なじみと二人だけの部屋は、彼等かくる前の日常と同じなはずだった。
だが、お互いの心境は、日常でもなければ、晴れやかでもなかった。
「…あのさ、」
俺に話し掛けてきたのは、昔から聞き慣れた声。
だが、今日の彼はいつもと違う。
俺もいつもの俺じゃないんだろうけど。
「なんかさ、俺ね、最近変なんだ。」
いつも変じゃねーか。なんて返事が返せない。
彼の言葉に、胸騒ぎを覚えたから。
「あの子がね、笑ってると、嬉しくなっちゃって、泣いてると、悲しくなっちゃって……あんたになついてると、悔しくなっちゃって。」
言葉の意味が分からなかった。
「一ヶ月…ちょっと?あの子と一緒にいて、笑ったり泣いたりして、ありえないって思ってる事が、現実になってる気がして」
たどたどしい言葉は、俺を納得させるのに十分だった。
「俺、あの子の事、…好きみたいでさぁ」
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