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篠岡がその事実を理解したのは、ユーリに襟を引っ張られ、バランスを崩し、篠岡の代わりにユーリが鬼の前に立ちはだかった時だった。
バックからまるで居合いのように引き抜いた左手と、人とは思えないほど爪の鋭い鬼の手がぶつかり合う。手と手のぶつかり合いには相応しくない、キィーンとした高い金属音のような音が辺りに響く。
人間の皮膚でそんな音を出す事は出来ない。ユーリの手には、あるものが握られていたのだ。
「ふぎゃっ！」
バランスを立て直す事が出来ず、篠岡はお尻から地面に着地した。その篠岡を倒した張本人は、篠岡に叫んだ。
「優理立って！早く！！」
鋭い顔をしたまま命令口調でそんなことを叫ばれては応じない訳にはいかない。
「はっ、はい！」
お尻を押さえながら何とか立ち上がった篠岡。その篠岡の手を掴み、ユーリはまた駆け出した。一条と細目の男がいる方ではなく、鬼の少年がいる方でもない。
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