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「ちょっ…と、ユーリぃ!」
真っ暗な廊下を走っている。人の気配が全く無い。それもそうだろう。そこまで凄まじい訳では無いが、どう見ても今は使われていない廃ビルの中なのだから。
ユーリは篠岡を完全に無視して、ある場所で足を止めた。
その扉の脇にある、「Δ」のボタンを押した。そう。エレベーターである。
「…ユーリ…エレベーターは…見つかっちゃうよ…」
息を整えながら忠告する。
一度閉じ込められると階に着くまで密室になる上に、降りた階がバレバレなのだ。
あまり良い逃走手段とは言えない。
「そもそも…電気が…」
そう言っていると、エレベーターが到着した音がした。開いた扉の中には、独特の個室があった。
ユーリはその中に入ると、「3」のボタンと「閉」のボタンを押して、急いで出てきた。ゆっくりと扉が閉まっていく。
「…これであのバカは引っ掛かるでしょ」
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