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この屋上はもともと人が来ることを想定して作られていないのかもしれない。
手すりが無く、あるのはちょっと高め、50cm程度の段差があるだけの非常に危なっかしい構造をしていたからだ。
しかも、その段差から身を乗り出して下を見ている自分がいれば、誰だって驚いてしまうだろう。
「ゆ…ユーリ!?何してんの!?危なっ!!」
すぐにユーリを段差で囲まれた内側に引っ張りこむ。
当の本人は冷静な様子で、下に通る大通りを指差しながら口を開いた。
「一条がいる。あそこ歩いてた」
最初は何を言っているのか分からなかったが、つまり、少なくともさっきの男はこのビルに入って自分たちを探していないという事だ。
「…何?あの人諦めたの?」
篠岡の独り言にユーリは首を振る。
「さっきの猫鬼が捜してるんだよ。でも、とりあえず時間は出来たかな…」
ふぅ、と安堵の息を吐き出しながら、ユーリはそこに座りこんだ。
しかし、気が気ではない篠岡は、そわそわしながらユーリに訪ねる。
「でも、捜してるんでしょ?ここ見つかったら逃げ場が無い気がするんだけど…」
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