4  非日常

44/46
前へ
/192ページ
次へ
ユーリの笑顔に、顔の血液が極端に下がる。 コマ送りのように、本当に少しずつ、本当にゆっくりと、ユーリの顔が小さくなっていった。 …数秒後、大きな音と、幾人かの悲鳴が、ほんの少しだけ聞こえた気がした。 「…ニャ?」 建物の三階で、ドッペルゲンガーを捜していた猫のような鬼の少年は、急に険しい表情になって捜索を中止し、自身の主のもとに駆けていった。 使われていない廃ビルの面している大通り。そこは人集りが出来ていた。ざわざわとした空間にはまだ人が集まっている。赤い液体が飛び散る様を見るために。 その人の流れとは逆に、道を歩く人間がいた。 ユーリは現場を一瞥した後、歩きながら独り言を口にした。 「…これで条件は満たしたよね?…‘エイコ’…?」 元死刑囚、ユーリ。正式名、囚人No.015の死刑を止めた命の恩人、エイコはNo.015に向かって言ったのだ。 ユーリが生き残る事ができる方法を。               ‐
/192ページ

最初のコメントを投稿しよう!

255人が本棚に入れています
本棚に追加