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周りの人間には気付かれない程度にだが、笑いが漏れていた。
掴んだ。やっと。
その気持ちでいっぱいだったから。
やっと、何年も羨ましく思っていた普通の生活、普通の人間関係を手に入れた。
自分を魔女と呼ぶ、現実を知らない腐った人間達もいない。そして何より、誇れる自分を。自分自身を手に入れたのだ。
少し笑うぐらい、罰は当たらないだろうと思う。
これから、最後の仕上げにエイコに会いに行く。髪を黒く染めたり、正式な手続きを取らなくてはいけないらしいからだ。この四日間であの、今は豊田と名乗っていた男はおろかエイコの居場所も見つけた。
灯台下暗し、というやつだった。
新たな人生を踏み出す。そのために、力強く前を見据えた。
その瞬間は、何が起きているのか分からなかった。
───目の前に迫っている、大型のトラックが何なのか─────
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