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その思いとは裏腹に、ガチャンと大きな南京錠が外れる音がした。それに続いてギギギ、と錆付いた蝶番が久し振りに軋む。
蛍光灯の薄暗い光が部屋の中に染みていく。光とは、こんなに目が焼かれそうになるほど眩しいものだったかと驚いてしまった。
部屋の隅で足を抱え込んで座っている私に、重い鉄製の扉を開けた強そうな男は喋りかけてきた。
「…No.015。出ろ。例の日だ」
「………例……?」
かつかつと靴を鳴らしながら人の部屋に入ってくる。そして私の腕を掴み、無理矢理立ち上がらせた。
そのまま腕を引っ張られ、部屋から出された。
外で待っていたもう一人の男も一緒になって、普通の蛍光灯より薄暗い光の射す廊下を歩いていく。私もボサボサの長い髪をなびかせながら、二人について歩いた。
歩くことだけでも、ちょっとの間しなくなるだけで…こんなに難しくなるんだ…。
そんなことを思った。
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