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「では、歌っているのは精霊…?」
「そうじゃ、少女の方は精霊じゃよ。もう一人は明日にでもここを発つであろうガイルじゃ」
ルソックは少し悲しみを込めて言う。明日からあえなくなるのかと思うと、やはり少し悲しいものがあるから。
「…今日はもう休まれよ。話なら明日でも十分間に合うだろうに…」
「ですが…」
「部屋は用意させる。…あの子は反対せんよ。心配いらん」
ルソックはユーマに微笑むと、扉の方へ行き、そこにいた使いの女たちに部屋へ案内するよう言った。
ずらずらと部屋を出て行く途中、ルソックはユーマを呼び止める。
「ユーマとやら」
「はい」
「…これを」
ルソックがユーマに渡したのは、この国の戦神が残した白い水晶だった。
「これは?」
「旅をする上で必要になるものじゃ…お前さんにガイルを頼みたい…」
「なぜ?」
「一番まともそうだからじゃよ。お前さんに預けるのがよいと思ってな…」
「…
」
ユーマは苦笑してこの水晶の意味をルソックに聞く。
「これはガイルの心をうつす水晶じゃ」
「心を…?」
「そうじゃ。この水晶が黒く染まる時、ガイルの心の中は憎しみに溢れ、世界は滅亡する」
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