ch-1

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「そういえば…最近、村々の井戸でお前とピティの歌声が聞こえんと言っておったのう…」   不意にそんな事を言われたので、ビックリして転びそうになる。 昔、まだ10歳くらいの頃、あの泉の近くでピティに歌を習った事がある。 ボクはその歌が気に入って、毎日ピティと一緒に歌っていた。 つい最近まで一緒に歌っていたのだが、じじ様や村の皆に上手くなっただの、キレイな歌声だの言われるようになって、あの場所にはボクたち2人しかいないのにと不思議になってじじ様にどうして知ってるのか聞いたところ。 あの泉と村々の井戸はどこかで繋がっていて、精霊の声や噂話などが頻繁に聞こえてくるという。 そんな泉の近くで歌っていたものだから、井戸を通じて皆に歌が届いてしまったということらしい。 そのことを知って以来、恥ずかしくて歌は歌っていないのだ。   「みな、寂しいと言っておったぞ」 「ははは…」   ボクは恥ずかしくて、頭をかいた。 じじ様はそれを見て笑う。   「今日でお前も大人の仲間入りか…早かったのう。これからはお前も一人で生きていくんじゃな…」
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