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友との別れ
「翼ー!お~い、待ってくれよ~!」
晴れ上がった空に一郎の声が吸い込まれている。
校門のところで翼は、振り返った。
ランドセルを揺らしながら、一郎が走って来る。
「ハァ、ハァ、待ってくれよ~翼ー」
息を切らせて、追いついてきた。
「なあ、、翼ー。ちょっと話があるんだけど…」
深刻な表情だ。いつもは、陽気な一郎にしては、なんか変だと思った。
「どうしたんだよ、一郎。なんか、暗いぞ」
「うん、、、あんなぁ俺ん家の父ちゃんな、仕事でシンガポールに行くんだぁ。そんでな、結構長くなるんだって。だから、家族みんなで行く事になったんだ~」
翼には、ピンとこなかった。
「それって、転校するって事か?シンガポールって遠いのか?」
「うん、でも飛行機で六時間くらいだって」
六時間という距離が遠いのか、翼は、考えた。学校の六時間目。という感覚しか思い浮かばない。それが遠いのか?近くないという事は、なんとなくわかった。
「いつ行くんだよ」
一郎は、うつむいたまま答えた。
「夏休みが始まったら、すぐに…」
「そんなら、今度の大会は…」
翼は、言葉が出てこない。一郎もうつむいたまま歩いている。無言のまま、家の前に着いた。
「それじゃあね、翼。練習行くだろ」
「あ、ああ、」
「後でね」
「ああ、後で、」
お互いに手を上げて別れた。
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