プロローグ

2/19
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
 11/14 日曜 14:15  突然だけど、僕は焦っていた。   現在の時刻は14時15分、もう40分もすればおやつの時間だというのに、僕はまだお昼ごはんを食べていない。  おやつの時間には家を出ないと、バイトの時間に遅れてしまう。 僕は早急にお昼ごはんを摂取して、やがて来る戦場に備えなければならない。 だが、この時間まで待ってもお昼ごはんがやってこない。  自分で作ればいいじゃないか、って思うかもしれないけど、それはできない。 そういう約束だ。  お隣に住む、もう10年以上の付き合いになる幼馴染との約束は、そういうものだった。 といっても、“この”約束したのは今朝方だけど。  今朝、9時ごろ、前に『日曜日は寝て曜日』って誰かが言っていたので、僕もそれを試すべくバイトまでの時間を自室で惰眠をむさぼる気満々だったところに、突然の来訪者。 窓から。 「やっほー!」  窓から入ってきたのは、向かいの家に住むいわゆる典型的な幼馴染、三枝優菜。 見ての通り、お馬鹿で元気な女の子。 交流自体は、物ごころつく前から、いや、僕と彼女がまだ母親のお腹のなかに出来あがる前からの付き合いはあるだろう。 要は僕の親と優菜の親の仲がいいってだけなんだけど。  ちなみに僕の自室は二階。 なのだけど窓の向こうには、構造上の欠陥とか、最初から狙っていたのかと疑ってしまうくらいに近い位置、すなわち、窓から手を伸ばせば向かいの家の窓を開け閉め出来るくらいの位置に、彼女の部屋はある。 「おはよーございます! 今日も元気だね! 朝ごはん作ったから食べて!!」 彼女の部屋に運んであるのだろうか、窓の外からは焼き魚のいい匂いが流れ込んでくるのだが  「おはようとは言いません。なぜなら僕はいまからも寝る気満々だからだ。 だから朝ごはんもいらないんだ」 寝ると決めた以上は、寝なくちゃならない。 僕は今日はバイトの時間までを無駄に過ごすことを決めたんだ。  「そっか! じゃあしょうがないね! でもお昼ごはんは食べるよね? 今日バイトだもんね?」 聞き分けのいいやつである。  「食べるつもりではある。 でも……」  「食べるつもりなんだね! じゃあ、“約束”! お昼ごはんは、一緒に食べよっ!」  聞き分けがいいやつだからと言って、人の話を聞くやつとは限らない。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!