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そして、“約束”だと言われたからには断れない。
「……、うん、わかった。 “約束だ”」
誓いの言葉とともに、二人で人差し指を出し合って、絡めて。 くっと、軽く指に力を込めて
「はい、指切った!」
前略、中略を重ねて、指きりの部分だけを済ませる。 10年間の間、何度も同じ儀式を行ってきた結果だ。
普通小指だろうと思うかもしれない。 昔は普通に小指で指きりしてたんだけど、彼女が力強くやり過ぎて、僕が大泣きして大げんかになったことがあって、それ以来、指きりは人差し指で、ってのが僕たちの普通になった。
「よし! じゃあ、またお昼に来るからね! それまでには起きてないと駄目だよ! ばいばーい!」
と、手を振りながら、空いてる方の手で窓の淵を掴み、ぴょんっと、棒高跳びよろしく自分の部屋へと帰って言った。
―――こうして、僕と優菜は、“今日のお昼ごはんを共にする約束”をしてしまったわけで。 だから、僕だけが一人で昼食を摂取することは絶対に出来ない。
……なら、どうしよう、そんなことを考えているうちにも、バイトの時間は刻一刻と迫っている。 もちろん、待っている途中、13時くらいに、遅いな~なんて思いながら優菜の家に様子を見に行ったりもしたんだけど、驚くべきことに、なんと外出中だった。
ちなみに、彼女はこの時代の人間にしては珍しく、携帯電話を持っていないので、外出してしまっては、連絡の取りようがない。
本当に、どうしたものか、こうなってしまっては、お昼ごはんは諦めるしかないかもしれない。
……、仕方ない、とりあえず、バイトの支度を済ませるため、リビングから出て階段を昇り、突き当りにある、ここが僕の自室。 扉を開く。
「おはよー!!」
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