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―――扉を開けると、気持ちいいくらい元気な挨拶。 次いで、目の前には信じられない光景が飛び込んできた。
僕が昼過ぎまで寝ていた状態のままでぐちゃぐちゃに放置されていたはずの布団が、さらにぐちゃぐちゃに丸められ、押入れ近くに寄せられていて、布団があった場所には折り畳み式の丸テーブルと座布団。
テーブルの上には、ポテトサラダに豚生姜焼き、茶碗にやや多めに盛られたご飯と、一体どうやって運んだのかお味噌汁、と、見事なまでに家庭的な食卓が、そこにあった。
全部冷めてるけど。
で、窓を背に、丸テーブルを前に、扉の前に立っている僕と向かい合わせになるようにちょこんと、座布団の上に正座してニコニコしてるのがお隣さん家の優菜ちゃん。
「……いつからここにいたんだ?」
なんでここにいるんだ? と聞こうか迷ったけど、理由は明白なので却下、むしろ僕が気になるのは、カピカピになってしまったご飯の方である。
「はっ! 軍曹が部屋からを出て行ったのを、窓から確認したであります!」
「微妙に答えになってないな。 あと、僕は軍曹じゃない、曹長だ」
「失礼しました!」
その謝罪は答えになっていないことに対するモノなのか、それとも階級を間違えたことに対するモノなのか。 いずれにせよ、ビシッと敬礼した体制のまま(左手で!)優菜は口を閉じてしまう。
「まぁ、いいや。 ごめんね、来るのが遅くなって」
「待ってないよ! ほら、早く食べよ!」
「うん」
実際、急いで食べないとまずい時間だ。 ゆっくりと雑談している余裕はない。
僕も、優菜と同じように座布団の上に正座して、手を合わせる。
「「いただきます」」
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