プロローグ

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 以前、同僚であり、同級生であるところの西江(にしおり)君が、16時出勤のところを17時にタイムカードを打ってしまうという、盛大な遅刻をやらかしたことがある。 その時、たまたま同時刻に退勤し、今と同じように紫煙を燻らせながらくつろいでいた鮎川さんと鉢合わせてしまったときに、彼の命運は尽き果ててしまったのだ。  詳しくは語るまい、西江君は、結局その日無断欠勤扱いとなり、にもかかわらず、帰ることができたのは閉店してからだった。 とだけ言っておこうと思う。 それが、この喫茶店で働くうえで、早めに到着しておいた方がいい理由のひとつ目である。 彼女の逆鱗に触れてしまえば、生きては帰れない(主に精神的な意味で) 制服のリボンを閉め直しながら「はい」「いえ、まさにその通りですね」「ははあ、おっしゃる通りで」と、鮎川さんの言葉に相槌を打ち続ける。 この喫茶店の制服は少々複雑な構造になっているので、着替えるのに時間がかかる。 最低でも十分は見ておいた方がいいのだ。 これも理由の一つ  最後に…… 
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