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私はここに来るべきではなかったのだ。
でも来てしまった。
あの大きな懐かしい手で、腕で、唇を抱かれるために、そしてその愛に浸るため、現実を受け止めるため。
愛は無い海辺のビーチで、私は一人佇んで(たたずんで)いる。
この昼の時間帯、海辺は恋人達で溢れている。
潮の香りの風が髪をなびかせる。
懐かしい人に会いたい。
とはもう思うな、私の友人の(男だが、恋愛感情を抱いた事はない)正孝(まさたか)は言っていた。
過去に生きていたいと願う事は出来ない、その事実だけが私の心に小さな穴を開けている。
私はあまりにも彼に深く沈み、染められすぎてしまったのだ。
そして、もうキス―目眩(めまい)がするほど、甘く愛しい―はもうないと思えば、私は泣きたくなった。
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