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「……案外やんちゃね」
病室の入り口で、セリナは苦笑をこぼした。
勝手に点滴を抜いたクロアが、看護師にプリプリと怒られていたからだ。
──リースがクロアの中で目を覚ましてから、数時間が経っていた。
その間にクロアは喜びを噛み締め、召喚したヴェルローネにこの術について詳しい説明を聞いた。
メリットは、リースとの人格交代(姿さえも)や、外界に顕現する事も可能だと言うこと。その際のリースは魔力により構成されており、精霊に近いそれなのだと。
デメリットは、各々の思考が筒抜けになりごちゃ混ぜになること。しかし対処法があり、それは事なきを得た。
眠っていた時に見た夢はこれが原因であり、それがリースの過去だということもこの時に知る。
そして、一番の問題は、リースの魂の維持に魔力が大量に必要であることだった。
ということで、人間界にいるだけで魔力を供給するヴェルは当分は精霊界でお留守番。
当面は魔物か人間などの魂を刈り取り、魔力を蓄える事に決定。
──で、すっかりこの見知らぬ場所(ギルドの病室)から脱出することを忘れていて、
巡回に来た看護師に目覚めたことが見付かり、そして点滴の件で怒られていたのだ──
知らなかったんだから仕方無い……初犯であったことも合間ってようやく解放されたクロアは、セリナに事情を話し、現状を聞いた。
死の森で彼女に助けられた事を覚えていたので、敵ではなさそうと判断したのだ。
もっとも初見であるリースはクロアの中で敵対心を剥き出しにしていたが、セリナは知り得ない。
クロアがブライティア家の捨てられ子であり、行く場所がない事を知ったセリナは快く迎えてくれることとなった。むしろ来い、と命令形で。
ここはギルド本部であり、魔物を刈る依頼をすれば魔力確保が出来るので、願ったり叶ったり。
5年前のギルド抗争終結により国からの独立機関として、多くのギルドが“ココ一つ”に統一された為、仕事は腐るほどあった。
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