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後から突き刺さる視線、首に斬れ込みが入る刃物により、隠し事が出来ない事を悟ったクロアはブライティアの事を含めて、今までの経緯を語った。
「────そう、嘘を言ってる風では無いわね…、いいわ、クロア──だったわね? 私はリースよ、入りなさい」
スッ…と、首から刃物が退けられた事を感じ、ほっと安堵を吐いたクロアは後ろを振り返った。
──と、彼女を初めて視認したクロアは、心の底から動揺した。
「どうしたの? 寒いから早く入りなさい、捕って食ったりなんてしないわよ」
クロアの動揺を恐怖からのものと捉えた女性は、少しムッとしながら扉を開けて中に入るよう促す。
彼女は、思ったよりも若かった。
歳は二十歳かそこらだろうか、真っ赤な髪を後ろで簪を使って留め、少しつり上がった目が泣きぼくろのセクシーさを台無しにしていた。が、子供には毒でしかないプロポーションの持ち主で、この寒風に関わらずジーンズにカーディガンといったラフさ。
やはり、クロアが初めて見る人種であった(もっとも、邸外の人間を見ることすら初めてであるが)。
「早く来ないと鍵かけるわよ?」
なかなか動こうとしないクロアに面倒臭さが勝ったのか、1人で中に入っていった女性。
「あ…っ、はっ、入りますっ!」
漸く我に帰ったクロアは、気恥ずかしさを隠しながら家へ入っていった。
口調も印象も違えど、正真正銘、この時がリース・アルテミアとクロアの出逢いであった――。
****
「これを見なさい」
家へ上がり、リビングらしき部屋で椅子に座るよう促されたクロアが最初に受け取ったのは、暖かい飲み物──ではなく、一部の新聞であった。日付から、半年前かと伺える。
「これは……?」
「半年前の新聞よ、一面を見なさい」
言われるがままに一面に目を通したクロアは、書かれてある記事に目を凝らした。
一面いっぱいに書かれたゴシップには、【ブライティア襲撃事件。御子息殺害。犯人未だ捕まらず】の文字。
事実とは大きく食い違っているそれに、困惑の色を隠せないクロアにリースが口を開いた。
「貴方が言った話しと、メディア……どちらを信じれば良いのかしら?」
この問いには、即答した。
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