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「そう、それはよかったわ、あまり釈然としない記事だったから……」
喉の刺が取れたかの様にスッキリした面持ちで、クロアの対の場所にある棚を漁るリース。
そこは明らか食器棚ではないので、お茶が出されるのはまだ先になりそうだ。
「えっと、どこかしら……。
──ん? ブライティアの人間なのよね? という事はクロア、凄い魔力量なんじゃない? 半年も家無しで、しかも死の森【ココ】で自活するなんて…ある程度の戦闘センスもあるようだし?」
「いや、まぁ物心ついた時には母さんに魔導書を握らされてたし」
「えーさい教育ってヤツね、名を残したい貴族家は大変ねー」
「今の言い方だと、リースさんは名を残す事を諦めた貴族家出身みたいだね?」
「───っと、あったあった。クロア、こっち来なさい」
「あ、話そらした」
「餓鬼の癖によく喋るわね、あなた何歳よ?」
「8歳。リースさんは?」
「8歳……ね。……やっぱり餓鬼じゃない。あと女性に年齢と体重は聞くなって教わらなかった?
はい、あっち向いてここ座って」
「教わらなかった。だから何歳?
──って、え? 何するの?」
「まだ19よ、あなたからしたらお姉さんね…、御姉様と呼んでもいいわよ?
首、血が出っ放しでしょ? 包帯巻いとくだけよ」
「俺からしたら19歳はオバサンだ──ぐぇっ!?」
「あらごめんなさい、手が滑ったわぁ~」
「じょ、冗談キツいよぉ」
「あら、ワイヤーで絞めれば良かったかしら?」
「首が吹っ飛ぶよっ!?」
「はい、処置しゅ~りょー」
「ツッコミもスルー!?」
「ちょっとは落ち着きなさい、冷静さが欠けたらこの世界では生きていけないわ、貴方は私を越えなければいけないの」
「……うん、わかったよ……──って! なにこのビミョーなシリアスっ!」
「そのツッコミは余計ね、茶番が最期まで続かないじゃない」
「最期!? 最後じゃなくて最期!? 死ぬまで続ける気!?」
「お茶淹れたわ、これで少し落ち着きなさい? 寒かったものね、そんなに取り乱して……」
「あ、ありがとう……?」
「さて、これからどうするの?」
茶菓子を摘まんで落ち着いた後、唐突にリースが口を開いた。
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