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「その餓鬼……、異端者か!」
リースの背を守る少年が“闇”を顕現したのをしっかりと見た男は、ニヤリと笑んだ。
この子供が異端者ならば、リースを討ち取る際に間違って傷付けても――最悪殺めても――なんのお咎めも無い。
闇属性を扱う者を異端者として隷属させていたのは今はもう昔の事であるが、この世界自体が異端者を格下に扱い、蔑み、不当に扱っているのは未だ変わらない風潮であった。
「あなた、クロアを嘗めない方がいいわよ…?」
「はッ! 10も生きていない餓鬼に何が出来るってんだ……、お前等は仲良くここで死ぬんだよッ!」
男は大剣を担ぎ、足に力をいれる。
別の男が牽制のため、一発矢を放ってきたところで──第二ラウンドは始まった。
ビュンと飛来してきた矢は一直線にクロアの頭蓋を狙ってきた。
「《闇模騎士-アンモナイト-》」
冷静且つ迅速に術名を唱えたクロアの周りに、モヤモヤとした闇が現れ、そしてそれは飛来した矢をキンッ!と弾いた。
只の煙のような闇が矢と金属音を奏でたかと思うと、それはウヨウヨとクロアの周りに停滞する。
「ここぉッ!」
「甘いよ、オジサン」
真上から現れた男は細剣を突き刺さんとしたが、クロアが動かした右手と連動した闇がその細剣を弾いた。当然、それを握っていた男は地に着地、再びクロアに切りかかったが、またもや闇に弾かれた。
騎士を模した闇。
闇模騎士-アンモナイト-。
それは忠誠を誓った主を守る騎士の如く盾となる。
「ガキの分際でぇええッ!」
しかし心なしか、闇は先程より薄くなっていた。
*
「死ねッ!」
「らあぁあッ!」
矢が放たれたと同時に駆け出した男が、リースに槍を突き刺す。
そしてもう1人が大剣を横に薙いだ。
「《ウェポンマスターver.シールド》ッ!」
ガキィインッ!
「あまり接近戦は得意じゃないのよね」
そう言いつつも顕現した盾は宙を浮き、槍を弾く。薙がれた大剣は叩きつけたダガーによって軌道がズレ、地面にめり込んだ。
「くそアマぁあッ!」
地にめり込んだ大剣を支えにして、薙いだ時の勢いのままリースに上段蹴りを放った男。
「くぅ……っ!」
リースはそれを、逆側に屈む事で避ける。
槍をもつ男は突く事をやめ、空いた手に溜めた水の玉をこちらに投げ抜こうとするが──
「剣技ッ!」
それよりも早く薙いだ大剣で、2人の胴体を斬りつけた。
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