─出逢い

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  ──そんな生活を続けて、約半年が過ぎた。 魔物の肉は固く、決して美味ではなかったが、食べれない事はなかった。 極たまにだが、食用とされている魔物を狩れた時は跳んで喜んだものであった。 「寒ぃぃ…」 で、只今の季節は真冬。 冬初めのうちは、食材となる魔物を多目に狩り、蓄えていたのだが…、 ぐぅぅぅぅぅ~…… 「腹へったぁ…」 雪は降らないものの、気温は低く、時には0度を下回った日もあった。 陽が上り、乾いた空気の中フラフラと歩くクロア。 ある程度の魔物は冬眠に入り、襲われる心配は殆ど無かった。反面、やはり食料に困る。 ビュォォォォォォ―― 「うはぁぁ…」 そして空腹に勝るのが、この乾いた寒風だ。捨てられた時の服は半年の月日によりボロボロ、加え、この森には風を防ぐ物が無いのだ。 「今日はあっち行こうかな…」 思ったよりもこの森は広く、捨てられた日から1週間毎に行動範囲を広げ、拠点を変えてきたのにも関わらず、未だに森の終わりが見えなかった。 「──《身体強化-闇-》」 魔力を足に集め、纏い、強化する。 この半年でクロアは、様々な魔法を使い、ほぼ完璧に習得した。 もともと邸で練習していた甲斐あってか、すんなりとはいかずとも扱えるようになった。 最上級魔法を──いや、禁忌魔法、古代魔法の発動段階までを習得したのだから、彼は天才いや、鬼才と呼ばれる天童であった。 ギギイィィィィィィィィッ! 爆走するクロアの眼前に飛び込んできたのは一匹の虫。いや、蟲。 ウールモースと呼ばれる巨大な蛾で、その羽はまるで毛布の様にフワフワとしている。が、勿論りんぷんである。 「──ちっ、消え去れっ《バニッシュデバウアー》ァァッ!!」 ギィィィィィッ!? 身を捩り必死に足掻く蛾をよそに、翳されたクロアの右手から顕れた“闇”が取り付く。 「虫なんか食えないじゃんかっ!」 腹が満たされない怒りをウールモースにぶつけ、その真下を通過。 その時にはもう、闇の余韻だけを残し、魔物は消え去っていた。 「───んっ?」 何処か良い拠点はないかと爆走していたクロアだが、不意に開けた場所に出た。 「んんんんっ?」 目を擦り、夢じゃないかと何度も頬を叩く。 「い、家…?」 クロアはこの森に来て──いや、産まれて初めて“他人の家”を見付けたのだった。
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