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「…彼氏が飼ってたの。それだけよ」
彼女は言い訳するように、用事があると言ってそそくさと電話を切った。
誰の声もしない受話器を片手に私は立ち尽くした。狭い部屋の中は急に静かになる。
「管理なんかじゃない」と私は呟いた。
静かな部屋に私の声は言い訳がましく響いた。管理なんかじゃない。そうだろうか、本当に?
彼らの水温を調節しているのは私だ。彼らの水槽を、住まいを、世界を掃除しているのは私だ。彼らに餌を与えているのは私だ。
これは管理なのだろうか。私は彼らを所有しているのだろうか。
私は彼らの自由こそ愛していたというのに?
私は、自由を管理していたのだろうか。水槽の中だけのまやかしの自由にはしゃいでいたのだろうか。幼い私が憧れた魚たちも、同じように管理された紛い物の自由だったのだろうか。
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