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幼い頃、水族館をよく訪れた。
人気者のペンギンやイルカには興味を示さなかったけれど、魚を見るのが好きだった。特にどの魚が気に入っているというわけではなく、ただきらきらしたアクアリウムの中を無心で眺めていた。眼前を漂う無数の魚たちを、時間も忘れて追っていた。
あのとき私の目に映っていた魚たちはまるで自由そのものだった。透き通った青い水の中で、魚たちはすいすいと自在に動き回るのだ。
あんな風に泳いだら一体どんなに気持ちがいいだろう、と、小さな私は心を躍らせた。
あの頃私は、魚になりたかった。
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