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季節は梅雨真っ最中。
何でこの時期に引っ越しなんて、と言うツッコミはとりあえず無しの方向でお願いしたい。
大きな荷物はすべて業者によって引っ越し先に送られており、入居したてのマンションへ向かうあたしの手には鞄一つだけ。
その身とは裏腹に、足取りは正直重い。
どんよりとした曇り空が、そんなあたしの心境に拍車をかけていた。
「……ここ、ね」
それでも何とかここまで運んだ足。
目の前に建つのは、今日からあたしが住む六階建てのマンション。
今さらどうにもならない。
ここで頑張るしかない。
自分自身にそう言い聞かせて、あたしはその敷居を跨いだ。
× × × ×
「あ、あのっ! 今日ここの507に引っ越してきた藤枝です。よろしくお願いします」
「あー、ども」
これで五回目。
思わずため息が出た。
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