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乱菊「たいちょー遅くなってすいませーん…って……隊長?」
乱菊が執務室に戻ると日番谷の姿はなく、机には終わっていない書類が積まれたままだった。
乱菊「仕事の途中でいなくなるなんて珍しいわね…厠かしら?」
乱菊が机の前まで行くと、墨が付いたままの筆が転がり机を汚しているのが目に入った。
乱菊(隊長……?)
時間は流れ、あっという間に空は紅くなった。
日番谷と雛森は祖母の回復を待つが、一向に意識が戻らない。
日番谷「そういえば…お前仕事は?」
雛森「今日は大丈夫だよ。もともと非番だからおばあちゃんの様子見に来たんだし。…日番谷くんは?さっき仕事中だったよね?」
日番谷は途中のままの書類を思い出したが、今は考えないことにした。
日番谷「いや、大丈夫だ」
雛森「そっか…よかった」
雛森は祖母の額の手拭いを水で冷やし直した。
雛森「さっきより熱が下がってきたみたい」
日番谷「本当か!?」
日番谷は祖母の顔を見て安堵の表情を浮かべた。
雛森は日番谷を見てくすりと笑った。
日番谷「なんだよ」
雛森「ううん、昔のこと思い出しちゃって」
日番谷「?」
雛森「おばあちゃんが道で足を挫いた時シロちゃんすごい慌てて…今日と全く一緒だったよ?」
日番谷「なっ…雛森てめぇ…!しかもシロちゃんて呼ぶなって言ってんだろ!いつになったら…」
「…冬獅郎かい…?」
日番谷「!!」
雛森「おばあちゃん!?」
日番谷を呼んだ声は、少しかすれているが紛れもなく祖母のものだった。
日番谷「ばあちゃん!大丈夫か?俺だよ、冬獅郎だ」
日番谷が顔を近づけると、祖母は優しい笑顔を見せた。
祖母「元気そうでよかったよ。しばらく顔を見てなかったから…」
日番谷「…!」
最近は仕事が多かったせいで、休日も雛森ほどここへ来る暇がなかった。
日番谷「ごめんな、ばあちゃん…今日ばあちゃんが倒れてるのは雛森が見つけたんだ」
祖母「そうかい…ありがとうね」
祖母が、日番谷に向けたのと同じ笑顔を雛森にも向けた。
雛森「うん…でもよかった、おばあちゃんの意識が戻って。だいぶ熱も下がったみたいだし」
雛森は祖母に負けないくらいの笑顔で返した。
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