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「ハァ…
本当に知らないんだな?」
「あぁ、そのはずだが…
何故だ?」
「親父、あんたも社長なら周りには気を配っておけよ…
楓、千紗都、そこに居るのは分かってるから、入っといで」
ガチャッ
扉が開いたその先には、涙目の楓と千紗都が立っていた。
「楓、千紗都…」
「今の話しは聞いてた?」
俺が尋ねると二人は小さく頷いた、一筋の涙を流しながら……
俺は立ち上がり、二人の元へ向かった。
やはりさっきの話しは全部聞いていたのだろう、二人は泣きながら俺に抱き着いてきた。
「行っちゃ…やだよ、お兄…ヒクッ…ちゃん…ヒクッ」
「そうだ…よ、行かな…いで」
そう楓は何度も何度も訴えてきた、もちろん千紗都も……
もちろん俺だって行きたくないし、この二人から離れたくもない。
だからといって行かない訳にもいかない。
親父の淡々と話す姿から考えてもうすでに向こうで住む家や通う学校は決まっているのだろう。
だから俺の我が儘は通用しないし、この二人の我が儘もまた…
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