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時間は俺が中学校を卒業したあたりまで遡る。
「侑哉、卒業おめでとう」
「……ん」
「返事それだけ?」
「他に何かあるのか?」
「さぁ?」
俺の問に対して曖昧な返答をするこの人は、俺の父親である
橘浩敏[タチバナ ヒロトシ]42歳
橘財閥の現最高取締役、つまりシャッチョさんである。
だから俺は、橘財閥の次期当主にあたる。
親父の容姿はまぁ、平均的かな。
「ゆうちゃん、卒業おめでとう♪」
ギュウッ
ミシミシミシッ…
「母さん、痛い……」
「ふぇ?
あらヤダ私ったら、ごめんね?」
そう謝りつつ俺の頭を撫でてくる。
この話の流れからでも分かるとは思うが、この人は俺の母親である橘 由美[タチバナ ユミ]*歳
親父の秘書をやっていて忙しいにも関わらず、毎日朝食と夕食を作るために欠かさず家に帰って来てくれる自慢の母親だ。
容姿は、まぁ一言でいえばヤマトナデシコ。
本当に3人の子供を持つ人には思えない。
息子の俺から見ても、だ。
「……そろそろ離してくれませんかね?」
「じゃあさ、お家なら良いの?」
「まぁ、こんな所よりかは…な」
「ホント?ホントのホントに?」
「あぁ、ホントホント」
「じゃあお家まで我慢するから、約束忘れちゃダメだよ?」
「あいあい」
「へへ、わ~い♪」
ったく、こんなんじゃどっちが親なのか分からなくなるよ…
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