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詩音は驚いたように目を丸くして、心を落ち着かせるように息を吐く。
そうして、詩音も俺の目をしっかりと見て言葉を紡ぐ。
「わたしのお願いは…」
──その時、頭の中でもう一つ声が聞こえた。
『わたしの将来の夢はねー』
ああ、そうか。
これは小さい頃の詩音の声だ。
2人で将来の夢について話していた時だ。
『流ちゃんのお嫁さんになって、ずっと一緒に暮らすことだよ』
そう言う詩音に、あの時確か俺は──
「流ちゃんとずっと一緒にいられますようにって」
そう言って、空に輝く星よりももっと明るい笑顔で笑った。
俺の言葉は、もう決まっていた。
忘れていただけで、ずっと昔から決まっていたのだ。
「それなら、お願いなんてする必要はないぞ」
詩音がその意味を理解するよりも早く、唇を塞ぐ。
詩音は驚いて目を白黒させていたが、俺の言葉の意味を理解したらしく、ゆっくりと目を閉じた。
『──お前はほっとくと何するか分からないからな。だから、俺がずっと一緒にいてやるよ』
夜の空にまた一つ、星が流れた。
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