星の降る夜

8/8
前へ
/8ページ
次へ
詩音は驚いたように目を丸くして、心を落ち着かせるように息を吐く。 そうして、詩音も俺の目をしっかりと見て言葉を紡ぐ。 「わたしのお願いは…」 ──その時、頭の中でもう一つ声が聞こえた。 『わたしの将来の夢はねー』 ああ、そうか。 これは小さい頃の詩音の声だ。 2人で将来の夢について話していた時だ。 『流ちゃんのお嫁さんになって、ずっと一緒に暮らすことだよ』 そう言う詩音に、あの時確か俺は── 「流ちゃんとずっと一緒にいられますようにって」 そう言って、空に輝く星よりももっと明るい笑顔で笑った。 俺の言葉は、もう決まっていた。 忘れていただけで、ずっと昔から決まっていたのだ。 「それなら、お願いなんてする必要はないぞ」 詩音がその意味を理解するよりも早く、唇を塞ぐ。 詩音は驚いて目を白黒させていたが、俺の言葉の意味を理解したらしく、ゆっくりと目を閉じた。 『──お前はほっとくと何するか分からないからな。だから、俺がずっと一緒にいてやるよ』 夜の空にまた一つ、星が流れた。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加