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正幸が女の子としゃべるのは久しぶりだった。タカ姉が女の子じゃなければの話だけど。
「で、弘子はここで何してんの?」
そう、この木は正幸のお気に入りスポット。
正幸はよくこの木に登り、葉っぱの間から空を見たり、昼寝をしたりしている。
「見てわかるでしょ、昼寝よ昼寝っ」
「寝てないみたいだけど?」
「これから寝るのっ」
「案外暇でしょ?学校をサボるとさ」
「もう慣れた」
「へー、常習犯なんだ」
「まあね、でもあんたも人の事言えないんじゃない?」
その通り。鋭いなこの子は…。正幸はもう不登校生徒の部類に入っている。2年に入ってから、ほとんど学校には行っていない。学校の時間割を見ながら、その日の気分で教科書を読み進める。授業に出ても寝てるだけの正幸にとっては、森にいる方が勉強はしている。
先生は、
「お前の気持ちもわかるが、学校に来いよ」と言う。自分でもよくわからない気持ちが、あのおっさんにはわかるというのだ。そんな訳ないだろう。冗談は顔とヅラだけにしてくれよ。
「何かしない?あんたも暇なんでしょ?」
弘子が初めて笑った。悪戯っ子の笑い方だ。何か怖いな。
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