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彼が何か必死で答えている。けれど、何を言ってるのかわからない。
「ごめん。聞こえない」
ヘッドホンを外してそう言ったら、
「名前何て言うの?」
って明らかにさっきと違う事言ってきた。
とりあえず答えなきゃ。
「ヒロコ。弓にムって書いて弘。コは子どもの子」
あっヤバッ、名字言うの忘れた。
「オレはマサユキ。正しい幸せと書いて正幸」
って正幸も名字言わないのかよ。
「ふーん」
「弘子さんって、オレとおんなじ学校でしょ?学年も一緒だよね」
どうして、さん付け?年下なの?学年一緒?どっち?
「正幸は何年?」
うわっ、ヤバッ何か焦ってる。もしかして年上だった?いきなりコミュニケーション失敗しちゃった。
もういやだ。
「2年だよ、緑のシール。弘子さんの自転車も緑のシールでしょ?」
そうか。自転車を見つけて私を探し、話しかけてきたってわけね。
それにしても、どうしてこうもっと胸がときめかないのかしら。こんな林で会うなんて、かなり運命的な出会いのはずなのに。
気持ち悪い人と運命の人は紙一重なのかも。
「じゃあ、弘子でいいよ」
あっ、喜んでる。かわいい。
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