…時機脱線…

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「ここは?」 前にもこの感覚になったのを覚えている そう、7年前のあの時だ 雅治は記憶が一気に頭の中に流れ込んでくるのがわかった 目の前から消える裕也 いきなり現れた男から刀を奪い斬ってしまった 始めて人を殺した 剣道の時とは違い、ヌルリとした感触 そうだ 刀はどうしたのだろう 襖が開きそこから眩しい光が差し込む 雅治が目をこらすとそこには奈美の姿が いや、奈美によく似た同い年位の女性が立っていた 「す、すみません… お体の調子のほうは……」 その女性は恥ずかしそうに襖の影に隠れる 恐らくこの宿で働いている娘だろう 「だ、大丈夫です すみません迷惑かけて…」 「いえ、父が好き好んでやったことなんで…」 「そうですか… そういやここに来た時刀を持ってたはずなんだけど知らないですか」 「それなら持ってきましたよ 必要かと思いまして」 雅治は襖の影からそっと差し出されるむきだしの刀を慎重に手に取る 何故かしっくりとくる 「………ところで良い刀を使ってるんですね」 「これ?そんな良い物なんですか? 俺刀に疎くて…」 「………ええ…… そ、それは長曾禰虎徹と言って大業物三十一工の一つです」 そういって娘は早足に去って行った どうやらとんでもないモノを手にしたみたいだ
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