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軽い手応えとともに、出刃包丁の刃が腹部に刺さった。 そのまま力を抜かずに刃を横へ滑らせる。 骨を切ったような嫌な音がした。 白木の上に黒っぽい染みが出来てゆく。 『……そう』 左手が血でぬるりと滑って、慌てて押さえなおす。 『待っているから――』 指を差し込み、中身を引きずりだす。錆びた鉄のような血の匂いが鼻についた。 『あ、大丈夫』 鼻歌を歌いながら蛇口をひねった。鮮やかな赤い筋が数本、排水溝に流れ込む。 黒くぽっかりと空いた空洞。もう何も入っていない。 『それじゃ……うん。またあとで』
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