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胸びれの下から包丁を入れ、刃を返して力を込める。ボツンと音がして頭が取れた。 あとは三枚におろして……美味しい刺身が出来そうだ。二人で食べるにはちょっと大きい魚だけど。 後ろから足音が聞こえて、さっきまで電話していた朝子(アサコ)が私の肩越しにまな板の上を覗き込む。 「よくやる気になるわね」 朝子は流しの端に置いた白いゴミ袋を見ながら、うげぇという顔をした。 ちらりとその横顔を見て微笑むと、手早く二枚におろす。 「でも、やっぱり新鮮な刺身は美味しいし、朝子も好きでしょ」 それを聞くと、朝子は大きくため息をついて私から離れた。 すぐ後ろで、どさっと音がした。食卓のイスに腰をおろしたのだろう。
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