8人が本棚に入れています
本棚に追加
胸びれの下から包丁を入れ、刃を返して力を込める。ボツンと音がして頭が取れた。
あとは三枚におろして……美味しい刺身が出来そうだ。二人で食べるにはちょっと大きい魚だけど。
後ろから足音が聞こえて、さっきまで電話していた朝子(アサコ)が私の肩越しにまな板の上を覗き込む。
「よくやる気になるわね」
朝子は流しの端に置いた白いゴミ袋を見ながら、うげぇという顔をした。
ちらりとその横顔を見て微笑むと、手早く二枚におろす。
「でも、やっぱり新鮮な刺身は美味しいし、朝子も好きでしょ」
それを聞くと、朝子は大きくため息をついて私から離れた。
すぐ後ろで、どさっと音がした。食卓のイスに腰をおろしたのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!