アンダルシアの追憶

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覚えていますか。 アンダルシアの丘にはじめの種を埋めた日を。 いたずらに撒き散らした種は予想外にしぶとく、その後に酷い乾期が訪れたにもかかわらずスコールの後にひょろりと芽を覗かせた。 まるで誰かが図ったようじゃないか。 たったいくつかの芽だったそれは今では丘を覆い遥か眼下を埋める程に広がってしまった。 覚えていますか。 はじめの種を撒いた日を。 根を張り、葉を伸ばし、顔を焼かれながらもなお焦がれて太陽を仰ぐ。 知っていますか。 その手が放った種が落ちたのはアンダルシアの土だけではなかったことを。
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