第一章

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会社の帰りの時間でした。夜8時頃だったと思います。 日本橋はサラリーマンが多い街ですから、夜の8時といえば帰宅するサラリーマンや 一杯やっていこうとするサラリーマンで賑わう時間です。 交差点で信号待ちをしていると、原付と車が衝突しました。事故です。 結構な勢いだったので原付に乗ってた方の人が勢いよく飛ばされて 私を含めたサラリーマンの塊が信号待ちをしている横断歩道の前に投げ出されました。 顔は血だらけで、頭からはおびただしい血がどろどろと流れ落ちていました。 私はびっくりして119番しなければと思いながら携帯を取り出そうとしつつ 何気なくあたりを見てみると、信号待ちをしているサラリーマンが 老いも若きもこぞってその血だらけの人を携帯カメラで撮影しだしたんです。 ぞろぞろと前に携帯をかざしながら、顔はニヤニヤと。 あるものは、同僚と話しながら。 「ヤベー、コレ。エグいなあ」とか 「すげーもんに出くわしたなあ」とか 結構立派そうな服装のサラリーマンや年配の方も。 誰も止めに入らない。撮影をやめない。 私は119番し、その場を足早に立ち去りました。 あそこに1分でもいたくなかったからです。 あの時。携帯カメラで撮影してた人たちのなんともいえない悪意ある笑みを今も忘れることができません。日本はやっぱり病んでるんですね。 いや、ひょっとしたら私が狂ってるんですかね。
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