第一章

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深夜のメンテナンス作業で眠くて眠くて、ユーザーの伝票明細テーブルを間違ってTRUNCATEした。 ROLLBACKも効かない。 あせってArcserve開いてテーブルを戻そうとする・・・ログウィンドウを見ると、 バックアップバッチは数ヶ月前から停止したままだった。 頭が真っ白になった。 IDCを出て深夜の自席に戻って、机の中の大事なものをかきあつめてかばんに詰めた。 社員証を課長の机の上に置き、会社を出て、アパートに戻る。 保険証、パスポート、前の年に死んだ愛犬の写真を持ち、始発にあわせて家を出る。 携帯が鳴り始める。何度も何度も何度も。空港につくころには着信が100回を超えた。 電池を抜き、俺は北海道行きの飛行機に乗った。 逃げるなら、なんとなく北、というイメージがあった。 それから3年無為な生活をし、ほとぼりが冷めたころ、北海道の小さな ソフトウェア開発会社に就職した。 経験を買われて、すぐにプロマネになる。 そして、孫請けながら大きなプロジェクトに参加することになり、 キックオフミーティングのために東京へ。 発注元とともに汐留で会議に参加する。 ・・・会議室には、俺が逃げ出した会社の部長と、課長がいた・・・ ふたりとも、会議のあいだずっと、顔を真っ赤にして俺を睨んでいた・・・ こみあげてくる胃痛と嘔吐感に耐え、会議が終わると同時に俺は会議室から逃げ出した・・・ それが、先週の金曜日のこと・・・死にたい・・・
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